”YouTuber”という、全く新しい職業
HIKAKIN氏の『僕の仕事はYouTube』という本が発売されたのは、2013年の7月。その辺りから、『YouTuber』という言葉が注目され始めたと記憶しておりますが、そう考えると、YouTuberという職業ができて、約3年が経ったことになります。その間、様々な人気YouTuberが誕生し、または消えて行き、もはや、小学生はテレビよりもYouTubeを見ていると言われるほど浸透した2016年、人気YouTuberが相次いで活動休止を発表するという事態が発生しました。
YouTubeお休みのお知らせ / Taking a break〔#471〕 / バイリンガール英会話 | Bilingirl Chika
果たして、YouTuberを休業に追い込む要因とは何なのか。
まずは、YouTuberという職業が、今までの芸能史には類のない、『全く新しい職業である』というところから認識を始めなくてはなりません。この記事では、YouTuberのどこが新しいのか、そして、そこから推測される活動休止の理由について、幾つかの見出しに分けて書いていきたいと思います。(あくまでも筆者がYouTubeとYouTuberの方々の活動を見てきた上での”推測”も含まれます。ご了承ください)
①毎日更新という、想像を絶するマラソンレース
多くのYouTuberを圧迫する要因の代表的なものが、その圧倒的な作業量です。一見、短い動画を簡単な内容と共に公開しているだけのように見えるため、「簡単そう」「自分にもできそう」と思われがちなYouTuberですが、全くそんなことはありません。実際に5分の動画を作るためには、
①企画(ネタを決める)
②撮影(監督、出演)
③編集
④アップロード
という作業が必要になってきます。これらは、例えばテレビ番組だとしたら、1つの番組に何十人もの専門スタッフがついて、1週間かけてやっていく作業であり、たとえ短い映像でも、そのサイクルを1人で回していくのはかなりの重労働です。まさにこれがYouTuberの前代未聞の実態。いまだかつて、「プロデューサー」「放送作家」「出演者」「監督」「編集マン」を兼ねた上で、これほど頻繁に作品を公開する映像作家はいませんでした。
そしてYouTuberには終わりがありません。その毎日の投稿が自身の給料に直結するからです。もちろん、たとえ1日間が空いても大ダメージは受けません。しかし、人気が出ると視聴者から当然のように毎日投稿を求められる世界。そしてその人気をキープしようとすると毎日投稿にならざるを得ず、必然的にトップスピードで終わりのないマラソンレースに突入することになります。毎日投稿を貫くはじめしゃちょーさんやHIKAKIN氏は、もう何年も、ほぼ毎日1人で動画を投稿し続けています。これがいかに大変なことで、いかに難しいことであるか、一度でも動画投稿を志せば、痛感することになるでしょう。
マラソンレースのトップを走り続ける彼らが今後、どこに行くのか。それは、まだ誰にもわからないのです。
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②顔の見えない視聴者たちと常に向き合い続けるストレス
YouTuberたちの仕事は、動画を公開して終わりではありません。
その後も、多くのYoutuberは、動画につけられたコメントに目を通し、時には返信をします。もちろんコメント欄を通じてファンと交流することで人気を得られたり、動画の感想をもらうことで次回作のヒントにするというメリットもありますが、コメント欄には『アンチコメント』も一定の割合で必ずあるため、それらを全く見ないようにすることは不可能です。
アンチコメントは、徐々に人間の心を蝕んでいく、毒のようなものです。
よく、Twitterで一般人と言い争いをして炎上している芸能人がいますが、彼らのような玄人でさえ、アンチコメントをスルーするのは難しいようです。さらに、YouTuberは視聴者と近い位置にいる分、炎上で受けるダメージも大きくなっており、必要以上に視聴者の目を気にするようになります。
昨年ごろから、有名YouTuberが炎上する事件がいくつか発生しました。彼らは、決して炎上させようとして炎上したわけではなく、(そういう人も稀にいますが)ちょっとしたミスや、揚げ足をとられて炎上したものです。それはコメント欄と向き合わなくてはいけないYouTuberにとって非常に辛い時間であるだけでなく、その後ゆるやかに人気を失っていく傾向があるようです。つまり、収入源に関わるということ。そうなると余計に、視聴者の目を常に気にするようになり、アンチコメントを目にするという悪循環に陥ります。
そして、視聴回数や、高評価、低評価の割合が常に公表されているということも、大きく彼らの心理を圧迫します。テレビ番組であれば、たとえ視聴率が悪くとも、それは制作スタッフや複数の出演者が分割して背負っている側面があり、また、必ず公表されるわけでもありませんが、YouTuberの視聴回数は、まさにそのYouTuberの「評価」そのもの。視聴数の下がったYouTuberのコメント欄には「オワコン」という言葉が飛び交ったりして読んでいる方も辛くなるほどです。罵声を浴びながらマラソンを続けるのは、よほどメンタルが強くないと無理でしょう。
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③突如発生した既存社会との関わり
YouTuberという職業が影響力を持ち始めると共に、大手企業が彼らにタイアップと称した宣伝活動を委託するようになってきました。これも、歴史的には類のない事態。それまでは、新聞、雑誌、テレビなどに割いてきた宣伝費を、1個人であるYouTuberに使うようになったのです。もはや、YouTuberがメディアとして力を得てきた証拠と言えるでしょう。そして、こういった案件は彼らに多額の報酬をもたらします。再生回数に応じてもらえるGoogleからのアドセンスよりも、こういったタイアップ案件の報酬の方が多い場合も珍しくありません。
しかし、そういった企業との関わりは必要以上に煩わしいもの。企画のすり合わせから始まって、最終的なVTRチェックまで、何度もやり取りが発生し、ただでさえ忙しいYouTuberの作業を圧迫していきます。
最近はそういったYouTuberたちのやりとりを一部肩代わりするマネジメント会社なども登場してきましたが、それでもストレスがゼロになるわけではありません。それまで自分の世界観で作ってきたチャンネルに、クライアントの意向という”異物”が入ることに、大きくストレスを感じるYouTuberもいるようです。
また、こういった案件では、企業が連れてきた監督の元で、YouTuberは出演者に専念するパターンも多く、それまで自分好みに撮影、編集してきたYouTuberは、それを他人に委ねるということにも戸惑いがあると言います。ここでもやはり、「専業出演者」である従来のタレントを中心とした既存の芸能スタイルとは、馴染めない部分が出てくるようです。
ご報告 / くまみき/Kumamiki
これからも『好きなことで生きていく』ためには…
「好きなことで生きていく」。このキャッチフレーズを、純粋に信じているYouTuberはもういないでしょう。当然、仕事である以上、思い通りにいかないことがあり、ストレスが溜まる場面があり、将来への不安があります。しかし、様々な紆余曲折を経ながらもYoutube界は確実に拡張しており、日本の芸能史の新たなページを作っていっています。
そこに関わる人々が、健やかに、より良いコンテンツを作っていくためにはどうすれば良いのか…
明確な答えが出るものではありませんが、時には立ち止まって、現状を振り返ることで見えてくるものがあるのかもしれません。
ランキングの続きを知りたい方は…
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